クリスマス・イブ

心から遠ざかるようにわざと速く歩く。するともう、心の足音も声も聞こえなくなってしまった。

セミの鳴き声が、俺を余計に苛々させる。

ただの友達かもしれない。
だけど俺の知らない男と、俺の知らない時に俺の知らない名前を呼び合っているんだろう。

「おいっ、亮平!」

後ろから声を掛けられ振り向くと、女友達のスミレがいた。

「おぉ」

「彼女さんは?」

「あぁ、あいつ、男と仲良く喋ってたから置いてきた。」

「えっ、ひどくない?」


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