神様の悪戯




ダメだ。
抑えろ私。
相手は非常勤とはいえ“先生”なんだ。
失礼な事は言えない。



「なんか言いたい事あんなら言え?」

壇上から、声が降ってくる。

続きを促すその顔はさっきとはちょっとだけ違った。

口角を上げて、ひどく意地悪な顔をしてた。

『言えるもんなら言ってみろ』

無言の圧力に言葉を噤む。


「…いえ、なんでもないです。忘れ物を取りに来たので、すいませんでした」

目的を忘れちゃいけない。

ケンカをしにきたワケじゃないんだから。
もし、時計がまだ元の場所にあれば彼が気付いててもおかしくない。


案の定、彼は時計を持ってた。

安心して、肩の力が抜ける。
頬が緩んでしまうのをさっと引き締めた。

「ありがとうございます。それ…」

礼を言いながら差し出した手がさ迷う。

だって、

「ガキが高そうな時計なんか付けてくんな。お前、名前は?」

なんて言うんだもん。



.
< 6 / 91 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop