ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】
あと三十センチで着水、と言うところで敬悟がキャッチしてくれたのだ。
「サ、サンキュ。敬にぃ」
茜は『あはは』と引きつり笑いをしながら、なんとか体制を直して立ち上がった。
照れ隠しに、汚れてもいない制服の濃紺のプリーツスカートを、パタパタと払う。
「サンキュ、じゃないだろ。注意力散漫! ドジも大概にしろ。良くそれで弓道大会全国三位になれたな……」
はぁっと溜息混じりの明らかにあきれた様子の敬悟の答えに、茜は、むうっと眉根を寄せた。
直情型の茜は、考えていることがそのまま表情に出る。
裏表が無くさっぱりした性格なので女子には人気があるが、少々女らしさに欠けるのが要因か、男子には女の子扱いされない。
結果、男友達はいても、彼氏いない歴十七年と言う、不名誉な記録を更新中なのだった。
それが茜の悩み処でもある。
「弓道は瞬間勝負だから、ドジは関係ありません! お生憎様!」
助けてもらった恩も忘れて「んべっ」と舌をだすと茜は、今度は慎重に父の元に向かった。