ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】
ぷんすかと先を歩く茜に『やれやれ』と溜息混じりの視線を向けている喪服に身を包んだ長身の青年――。
神津敬悟(かみつけいご)は、二十一歳の大学四年生。
茜にとっては、四つ年上の父方の従兄――
父の妹の子供で、幼い頃から一緒に育った兄のような存在だ。
敬悟が五歳の時、ただひとりの家族だった母親が交通事故で他界したため、伯父である茜の父に引き取られたのだ。
当時茜は一歳。文字通り『オムツも取れていない赤ん坊』である。
五歳の敬悟少年は、突然出来た妹をそれは可愛がり、当時から茜の母・明日香が病弱だったため、それこそ『オムツも替えてくれた』のだ。
それを折に触れ言われるので、一応十七歳。年頃の娘として茜は面白くない。
「まったく、デリカシーがないんだからっ! だから彼女が出来ないのよ!」
とは、『オムツ』の話を持ち出されると、茜が必ず言う決めゼリフである。
ただ、敬悟の存在は茜にとって、無くてはならないものだった。