ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】
敬悟が身を屈めて、振り下ろされた鬼の腕の肘の上の部分を、生身の上総の腕を下から薙ぎ払い、渾身の力を込めて上総の鳩尾に拳を叩き込んだ。
ゲホゲホッ――。
上総が苦しそうに咳き込み、己の体を支えきれずに片膝を付いた。
「ちっ……」
上総が血の混じったツバを吐き捨てながら、ゆっくりと立ち上がる。
「全く、計算外でしたよ……」
ふう、と一つ息を吐き、上総がゆっくりと目をつぶる。
次の瞬間、開けたその瞳は、真っ赤な鬼の目に変化していた。
犬歯が大きく牙のように伸びて行く。
茜は、それを金縛りにあったように見詰めていた。
「これくらいで、充分ですね」
人の姿に、鬼の右腕。
赤い双眸に、鋭い牙――。
半人半妖の上総の姿。
それは、鬼そのものよりも、見る者に恐怖心と嫌悪感を抱かせる。
人であって人ではないモノ。
だがそれは、敬悟の中にも確かに存在するモノでもあった。