ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】
ひゅっ――と、風が鳴る。
瞬間、びっと言う音を発し、血が霧のように飛散した。
「けっ、敬にいっ!!」
上総の右肘から先だけが、赤鬼のそれに変化していた。
どちらかと言えば細身の上総の肘に、取って付けたように生えている鬼の腕――。
そのグロテスクな鬼の鋭い爪から、引き裂いた敬悟の返り血がぽたぽたと伝い落ちた。
「どうした上総? さっきみたいに、鬼に変化してみたらどうだ?」
左頬を浅く斬りつけられた敬悟が、流れ落ちる血を手の甲で拭いながら上総に問う。
「あなた相手に本気を出しては、簡単すぎて面白みがないですからね――」
だが、そう答える上総の顔には、今までのように嘲るような笑みは張り付いていない。
それは、彼の余裕のなさを如実に表していた。
「……なら、本気にさせてやるよ」
だあっ――と、敬悟が上総に向かい駆け出す。
真正面から飛び込んで行く。
上総の鬼の腕がそれを薙ぎ払おうと、振り上げられる。
「敬にぃ! 危ないっ!」
茜は思わず声を上げながら、目をつぶった。