ブライト・ストーン~青き守りの石~【カラー挿絵あり】


実際、あれほど酷かった出血は止まっていた。


さすがに触れられれば痛みはあるが、上総の鬼の爪で引き裂かれたはずの深い傷は、あらかたが塞がっていた。


四分の一、体に流れている鬼の血のなせる技か――。


腕を変化させたことで、その血を活性化させたのかも知れない。


一度目覚めてしまったものが、果たして大人しく眠っていてくれるものだろうか?


もしかしたら、全てが上手く行っても、もう元のような普通の生活には戻れないかも知れない。


敬悟の胸をそんな苦い予感がかすめる。


それでも、最後まで諦める訳にはいかない。


何としても、茜だけは元の生活にもどしてやらなければ。


そのためにまずやるべきは、この里を守る結界を解くことだ。


「敬にぃ。上総は……?」


黙り込んでしまった敬悟に、茜がためらいがちに尋ねる。


「……死んだよ」


死んだ――。


上総が、あの残酷な恐ろしい鬼が、死んだ――。


短く答えた敬悟の声は、変わらず穏やかだ。


でも。


茜は、敬悟が泣いているような気がして、両の手のひらでその頬にそっと触れてみた。


「茜?」


涙が流れているわけではなかった。


でも敬悟は、『神津敬悟』という人間は、相手が例え半分が鬼だとしても人を殺めて平気な人間じゃない。


茜は敬悟の頭を抱えるように、両手を伸ばした。

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