空中ブランコ
「籠の鳥になっても、揺りかごの鳥にはならないことを貴方も覚悟して置いた方がいい。」
メリーは偉そうに言う男に、いい印象は持てなかった
「貴方“も”ですか……どうも気に入らない忠告ですね。」
「フッ、気に入らなくて結構ですよシルディ公爵。
言っときますが、貴方でも私とまともに殺り合えば、深手を負いますよ」
どこまでも自信過剰な男に疲れたのか、シルディが話すを止めてクジルに視線を向けた
「困ったもんだね…ソルト公爵。僕を目の前に生意気がすぎない?」
果して、今の彼の笑顔に勝る恐怖があるだろうか
ソルトも一瞬怯んだように、距離をとるがそれだけで収まらない
「おやおや、クジル公爵。愛しの“堕ちた彼女”からの自立はできたのですか?」
怯みながらも偉そうな彼は、意地っ張りなのか、ただの能無しなのか……
「くすくす。」
「っ、何が可笑しいっ!!」
小馬鹿にするクジルに、ソルトが怒鳴る
「いやね、ソルト君がたかが殊特部隊の隊長になっただけで、随分慢るからさ。ちょっと楽しくなっちゃってね」
笑顔をベッタリ顔に張り付けているクジルに、場数を踏んでいるメリーさえ同じ生き物として恐怖を覚える
「なにを言うかと思えば………負け惜しみ、…ですか。」
言ってからの後悔は後の祭り
ソルトに薄らと汗が見える
「アハハハッ!
負け惜しみか!偉い事言うね!」
ひとしきり笑ったクジルが黙る
「君、大丈夫?」
ドクンっ!!!!!!!
「バンパイア貴族なら心得とくべきだよ。
なぜ、シルディ君のヴァクロイツ家と、僕のセルアント家が古くから公爵地位の常連一族なのか、をね。」