放課後ハニー


私も蓋を開けて、一口喉へ流し込んだ。
中途半端な寝起きの頭に糖分がゆっくりと染み渡っていく。
紅茶は言うほど冷めてもいなくて
胸の奥に潜む苛立ちも溶かしてくれるみたいだった。


「こないだの本、どうだった?」
「あぁ、面白かった。言ってたシリーズも読んでみたわ」
「どう?ちょっと独特だけど」
「うん、面白かった。今二つ目読んでる」
「ほんと?良かった。それでその目?」
「え?」
「目の下。ちょっとクマ」


とんとん、と相模は自分の左目の下を指先で叩く。


「あー…コンシーラーで隠したのになぁ…」
「友響ちゃん色白いから目立ちそうだね。夜更かしして読んだのは一つ目?」
「そう。最後まで気になってしょうがなかった」
「で今二つ目か。どんなのだっけ?ちょっと見せて」


言われて鞄を手元に寄せ、読み掛けのそれを取った瞬間
あれ、と違和感を覚えた。


「…はい」
「ありがとう」


渡してまた違和感。
おかしくない?なんかおかしくない?

私と相模が普通に会話してるってなんかおかしくない?


「そうそう思い出した。いいよなーこのコンビ。これの犯人は―」
「言ったらその白衣紅茶色に染めてやる」
「あははっ!友響ちゃんもやっぱいいわー」


本から上げた顔をくしゃっと崩し、相模は笑った。
何がやっぱなんだか…
私は唇をへの字に歪め、凶器になり損ねた紅茶を飲み下す。


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