満ち足りない月
「いや、俺もあの喪服姿の奴らを見て注意していたが、あの二人はヴァンパイアじゃない」
「じゃあ一体……」
「ただの人間さ」
ラルウィルはソファの前にある自分の膝程の高さの低い机を見た。
そしてその机に置かれている分厚い本を手にとった。
「例えばヴァンパイアならば…」
パタン、と机の上に本が落ちた。
「これくらいの音がしただけで遥か遠くにいるその場所が分かる」
そしてラルウィルは嘲笑を浮かべた。
「あんな近くにいた俺達の吐息すら分からないなんて人間という種族ぐらいだよ」