満ち足りない月
コンコン、とホールに扉をノックする音が響いた。
それは廊下の掃除をしていたセシルの耳にも届き、セシルは顔を上げた。
恐らくリュエフではないだろう。
昨日出たはずなのにまた来るような事はあるはずがない。
だとしたら、まさかあの人の手の者がようやくここを見つけたのだろうか。
昨日と同じ不安感がセシルの体を一気に巡った。
自然と顔は強張り、心臓はドクドクと大きな音を立てて脈立つ。
そしてゆっくりと立ち上がると、ホールへ向かって歩き始めた。
コンコン。
またノックされた。
セシルはドアノブに手を置くとふう、とゆっくり息をはく。
そしてキィィといつものドアが軋む音がホール響きながら、ゆっくりと外の光が漏れた。