満ち足りない月
最初に視界に入ってきたのは、少年の顔。
まだ幼さが抜けていない16歳程の年齢で、正装された服装を年の割に着こなしていた。
少年は目が合うと微笑んだ。
セシルはともかく“奴ら”ではない事を確信してホッとした。
いくら何でもここに子供を連れてくるはずがないだろう。
だとしたらまたもラルの客人だろうか。
「おはようございます」
笑顔でそう言う彼に、セシルは思わず「お、おはよう」と、うろたえながらも何とか挨拶を返した。
「小僧はいるか」
ふいに下から別の、幼い女の子の声がしてセシルは驚いた。
そして少年から下へと目線を下ろすと、少年の横には一人の少女が立っていた。
こちらは12歳くらいの女の子で、可愛らしく整った幼い顔立ちは昔セシルが持っていた人形にそっくりだ。
ブロンドの髪がよく似合っており、緩く巻かれた髪は上でツインテールにして括られていた。
服装はその顔立ちによく合った、フリフリのレースがあしらられた深めの赤いドレスのようだ。
黒いレースのグローブが手にはめられており、レースの日傘が小さなその手に握られていた。