満ち足りない月
「え、ちょっと」
セシルは何ともなしに自分の横を通りに中に入ってきた二人を引き止めようとした。
その時、
「大丈夫だよ、エル。彼女達は客人だ」
上からいつもの低い声が聞こえてきた。ホールに響いてよく聞こえる。
セシルが見上げると、正面の階段にラルウィルが立ち、こちらを見ていた。
「久しぶりだな、ウルベもレイルも」
穏やかな声でニッコリ笑いながら少女と少年に言った。
「ふん、小僧の分際でいつまでも呼び捨てにしよって」
そう言って、不機嫌そうにラルウィルを見る少女を見ながらセシルは思った。
さっきからこの子、見た目と違ってキツイ言い方だし、何よりお婆さんのような話し方をするわね。
ラルウィルはそんなセシルを余所にはは、と軽く笑ってごまかすと、言った。
「レイル、朝食は?」
「いえ、まだです」
少年はラルウィルの質問に答えた。
「ならセシル、君のも合わせて三人分作るとしよう。君も食事部屋に行ってくれ」
ラルウィルはセシルを見ながらそう言うと、階段を下りて、キッチンへと向かう。