満ち足りない月
「とにかく君は此処を出た方がいい。此処は危険だ」
「なら、何処に行けばいいの?」
俯きながらそう答えると、前を見据え、ラルウィルと目線を合わせた。
「屋敷を出たら、真っ暗な森。どこにも幾宛なんてないの」
男に縋る[すがる]女ほど見苦しいものはない。
しかし、この時のセシルにはそんなずる賢い考えはなかった。
ただ、一心にラルウィルを見つめる。
強い意志が感じられた。
「はぁ……分かったよ」
しばらく沈黙が後、ラルウィルが諦めたようにふぅと溜め息をついた。
その瞬間、バッと前を見る。
「本当に?」
まだ苦しそうな表情を見せながら、ラルウィルは適当に手をひらひらさせた。
「ありがとう」
きちんと頭を下げて御礼を言った。