女子DEATHヒーロー
 あたし……初対面の人にめっちゃ嫌われてるじゃん。っていうか、あたしも那奈に仲良くしてもらってるのが信じられないもん。
 優しい子なんだろうね。

「まぁいいですわ」

 そう言って、センパイは体育館の扉を開けた。
 ヤン長が……葉月センパイが一体あたしに何の用があるんだろ?ってか、同室なんだからそこで言えばいいのに。

 まぁ、会わないけど!
 体育館の中は普通……じゃなかった。っていうか、体育館じゃない気がする。確かに体育館なんだけど……玉座がある。玉座には葉月センパイが座ってる。
 ……周りには誰も居ないけど、多分集会になるとみんなひざまずいてるんだ、きっと。
 そんなに団結力あるかは不明。

「哉様、鈴木絢灯さんをつれて参りました」

 杏南さんが言ったが、ヤン長は何も言わない。ちょっと顎を動かしただけだ。
 それを見た親衛隊の2人は、頭を下げると出て行った。顎で人を使ったよ、あの人。
 
 今のに便乗してあたしも出れば良かった……。

「鈴木」
 あたしは後悔しながら葉月センパイを見た。オレンジの髪が今日もキマってる。
 ……別にあたしは気にしない。端っこに乱れた制服の子が居ても。ついでに、ヤン長の制服が乱れてても。シャツのボタンをきっちりしめて欲しいけど。
 玉座に座るならちゃんと身嗜みを整えて猫を撫でなきゃいけないとあたしは思うなぁ。

 あたしは何も言わずに一歩一歩玉座に近付いた。どこまで行ったら無礼って言われるのかを悩みながら。

「……こんにちは」

 とりあえず、適当な距離で立ち止まると頭を下げた。その時、あたしの姿をようやく確認した子が慌てて着衣の乱れを整えて走って出て行った。

 あたし、おじゃました?

「……」
「……」
「……」

 呼び出したくせにヤン長は沈黙を守っている。あたしがあんたのせいで早速授業サボっちゃったのに、何さ!
 次は拓兄の授業じゃないからまだいいけど。

 でも、用事無いなら帰らせて。
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