君に染まる(前編)
植野先輩に会えたことが嬉しくて
すっかり忘れていた。
植野先輩の目の前で
あたしは獅堂先輩に抱きしめられている。
「きゃあ!離してください!」
抜け出そうと必死にもがいた。
けど、あたしを抱きしめる腕の力は
弱まるどころか更に強くなる一方。
「会長こそ、こいつとどんな関係だよ」
作り笑いを浮かべる獅堂先輩に、
抱きしめられているというより
締めつけられてるあたし。
「中学の時の後輩なんだ」
「そんな昔から誠実キャラだったのかよ」
なっ!?
「誠実キャラか…
おもしろいこと言うんだね、獅堂くん」
くすっと笑った植野先輩は
腕時計を見ると、
「僕そろそろ行かないと。
これを運ばなくちゃいけないんでね」
そう言って
持っている段ボールを軽く叩いた。
「じゃあね未央ちゃん」
「さようなら…」
「獅堂くんも、失礼するよ」
「ふん」