悲涙の花びら

走り出す運命





待ちに待った日が来た。


と言っても決して良いものではないけど、私にとっては運命を左右する重要な日だった。



「シャレン、部屋から出ろ。
お客様を待たせるな」



酷く広い部屋に閉じこめられた少女・シャレンは、部屋に入って来た主人を見て、ゆっくりと立ち上がった。


シャレンは、闇色の瞳を震わせた。


それが恐怖からくるのか、はたまたこれから起きる事への緊張なのか、自分自身にもわからなかった。



兎に角、今日は私の運命が掛かっている。



「シャレン、早くするんだ!」



主人、とは言っても〝奴隷〟であるシャレンを所有している奴隷の商売人な訳だが、彼は今日、いささか焦っているように見える。


その理由は何となく、シャレンは知っていた。



(私の…この容姿の所為、ね)



シャレンの容姿は、髪も瞳も闇色をしていた。


この国、スニリア帝国では黒は異色とみなされていた。




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