タレントアビリティ
「あたえ、さん……?」
『……望まぬ客人っていうものは、訪れるものなのかしら』
「あの、何か」
『添。今日は9時まで帰らないで。出来れば学校からも離れて、町からも出て、なるべく遠いところで今日という日を過ごして』
「え……」
『ちょっとヤバ気なのよ、私。命の保障はある、大丈夫。いいからなるべく、遠くに』
「あの能恵さん、あの、どうかした……」
『何でもないって!』ブツッ

 電話が切れた。
 慌てて屋上のコンクリートを蹴って駆け抜け、フェンスに駆け寄って自宅の方を見る。学校から程近いアパート。何か起こっているようには見えない。

 しかし。

 何かが絶対、能恵の身元に起こっている。それかもしくは……。

「能恵さんが、何か起こした、とか……」
「添さん?」
「あーもーめんどくさいっ! ゴメン風音さん、早退すっから菅野先生に言っといて!」
「え、え、ええ?」
「いいからもーっ! やたらとトラブルが並ぶ! よろしく、風音さん!」
「あ、はい……」

 ポカンとする風音からタッパーをいただいて屋上を後にする。階段を3段飛ばしで下りていく時に鳴り響くチャイム。それを無視して校門を飛び出した。
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