タレントアビリティ
「でもまあ、能恵さんをここまでヒートアップさせた走馬君は、何を言ったんだ?」
「べっつにー。ただ何と無くここに来れば何と無くどうにかなるかなって思ったんだ。兄ちゃんにも頼れるし」
「てかお前さ。ハッピーマート無茶苦茶にしただろ?」
「うん。なんかさ、何と無くうっとーしかったから」
「……ああそうかい」

 つまりは何と無く。いわゆる第六感。第六感だけでここを突き止め、そして能恵と出会ったということだろう。
 しかしここまで激昂する能恵を初めて見た。今も肩を押さえる腕を話したらどうなるか分からない。ふるふると震える身体が、細くて熱かった。

「何をした、お前」
「だーかーら、何もしてないってー」
「何かしただろうがお前は……。ここまでこの人が暴れるって事は、お前この人の何かに触る事をしたんだよ。ひょっとしたら『何と無く』かもしれないけど」
「めんどくさっ。ま、いいや」
「よくない」
「いいだろ? 兄ちゃんにはかんけーない話だし」
「関係なくないよ。俺には関係なくても、能恵さんには関係がある。ってことは俺にも関係があるってことだ」
「……添」

 げほっ、と空気が漏れた。腹部を思い切り蹴り上げられたのかと思ったけど、その通り。
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