タレントアビリティ
 ストーカー二股の噂も冷めた翌日、隣のクラスの拍律風音の席は空席だという事をクラスメートから聞いた。机に突っ伏して考える。いわゆる、おサボりらしい。

「100パー何かあったはず」

 配られた数学の問題をそれなりに解いてからずっと考えていた。昨日の涙声と自分の冷たい言葉の関連性とか、能恵が何を知っているのか。
 そしてそれよりも、自分が何故ここまでして赤の他人の事を深く考えているのか。それが何よりの疑問だった。

「……なんでだろ」

 才能が目に入るから添は日常から距離を置いていたはず。触れすぎてはきっと自身が火傷してしまうもの。それが他人の才能。
 才能に干渉すれば、巻き込まれるのは見え見え。だからこそ添は距離を保っていた。なのに。

 何故か拍律風音の才能には、心惹かれるものがある。

「なんでだろ?」

 ポケットにある能恵さんからの手紙。刻まれている風音の電話番号は、もう既に添のケータイにあった。昼休みに屋上で連絡してみたのだが繋がらない。それに関して何故だろうか、添は苛立つ。
 そもそも怪しがったりはしないのだろうか。出会って2日ほどのクラスも違う男からいきなり電話。あ、だから休んだのかもしれない。それちょっと悲しい。

「……終わったのか?」
「あい」

 数学教師が何か言ってきたので軽く流す。それなりに埋めたプリントを提出して、本格的な居眠り体制に移行。教師は咎める事なく、溜め息を零して去って行った。

「だるっ」

 考えるのも面倒だ。しかし放っておけば確実に思考を蝕んで動けなくなってしまう。何とかしてこのつっかかりを取り去りたい。

 そう、これは自分のための行動。そう思えばいいのだ。
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