タレントアビリティ
「先生」
「ん?」
「姉がキトクなので帰ります」

 立ち上がってそそくさと荷物をまとめ、そして教室から出ようともくろむ。当然肩をがっしりと掴まれ、ドアの目の前で添の足は止まった。
 添よりやや背の高い、若い数学教師。茶髪にピアスが似合う先生は、ホストとでも紹介したほうが通りがいい。

「空白、お前ね。そんな見え見えの嘘……」
「さっき母からメールが」

 ずいっと携帯電話を突き出すと、数学教師は呆気なく道を通してくれた。「早く行ってやれ」のありがたい一言を添えて。
 廊下を走り抜け校門を走り抜け、学校からやや離れたところで携帯電話を弄る。能恵が遊びで作ったプログラムがこうして役立つとは、正直思いもしなかった。

「さーてと。何から手を付けようか」

 携帯電話を閉じてのんびり歩く。屋上を振り返っても、誰もいなかった。
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