タレントアビリティ
 しばらく歩いたところで、何も手掛かりが無いことに気付いた。風音に関して何も知らない自分が何をしているのかと、我ながら苦笑して立ち止まった。人通りの多いショッピングモールの近く、学生服でうろついているのは自分くらいだ。
 フードコートのテーブルに座り、携帯電話を開く。登録しておいた奇特な姉の番号にコールすると、すぐに声が聞こえて来た。

『そえー?』
「あ、どーも能恵さん。ドバイでの仕事はうまくいってます?」
『ぼちぼちかなー。んー、いい具合に進むように組んだはずなんだけどね、私の同業者がわらわら動いててイマイチ』
「能恵さんの仕事って……」
『前話したでしょ、才能人だって。世界に私だけのお仕事』
「そうですか」

 水を飲みながら相槌を打つ。相変わらず桁外れの仕事をこなす能恵と、ただの学生である自分が同居しているとは思えない。

「今いいですか?」
『いいよ? あー、昨日電話したなぁ、あの番号に』
「……どういうつもりだったんですか」
『にゃははははー、なーいしょ。それで?』
「風音さんが今日学校休んでるから、何があったんだろうなって思って」
『ほっとけない、って事かしら?』
「……才能あるくせに、才能を否定する。その考えが許せなくて、ガツンと言いたい」
『自分を見てるみたい、だからでしょ』

 返事につまった。フードコートの隣のゲームコーナーから、賑やかな音が響く。
 能恵に言われてようやっと納得出来たのかもしれないし、ひょっとすると言われる前から分かっていたのかもしれない。けれど答えは、きっとそんな感じ。

『そえー?』
「一応、YESとでも答えましょう。きっと俺は、自分で自分を許せない。だから風音さんを許せないのかもしれませんね」
『ふーん、そういう風に考えるのね、そえって。でもねぇ、じゃあその考えがそえの芯だとしたら……、添は自分を許す?』
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