タレントアビリティ
「ん……?」

 ごつん、と膝に硬い感触。足元を見ると能恵が添の膝に頭を乗せて、ニヤニヤと奇妙な笑みを浮かべていた。
 こういうの、苦手。能恵は基本的にいい人で雲を掴むような人格をしているけど、地味なところでチクチク突いてくる。
 そして突く時は必ず、今のような笑みを浮かべるのだ。子供がいたずらを思い付いたかのような、ちょっと近寄りがたい笑み。

「そーえっ」
「……何ですか」
「どうにかする? 風音ちゃんの時みたいに、何かやるの?」
「今回はいい。なんかあんまりイライラしないし」
「風音ちゃんにはイライラしたんだー。へーっ」
「あれは、なんか」

 鏡を見ているみたいだから。それは一度言ったよなと思い当たり、それを飲み込む。能恵もそれを悟ったらしい。深入りはしなかった。珍しく。
 しかし入れ替えた。話題を変えて能恵は続ける。

「じゃー、そうま君は?」
「……どうでもいい」
「またまたぁ、正直になろうよー。あの子、なかなかの持ち主なんだからー」
「わけが分かりません」
「跳び移る脚力と、時計店からこっそり盗むぎじゅちゅ」

 噛んだ。
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