Rain
『ちょっと待ってて下さいね』



タクシーを止め、運転手にそう言ってあたしは聖夜くんを呼びに行くためタクシーからおりた。









『知らんわ…うるさい。なんやねん?…うん、で?はぁ?勝手にしろやもう…電話してくんな。別れよう』




あたしが聖夜くんのところへ戻ると、聖夜くんはそう言って電話を切っていた。



相手は…《彼女》だ。







『あ、ごめんな』

『いいょっ。タクシー拾ってきたから乗ろ!!』




あたしがそう言ってタクシーへと歩き出すと、聖夜くんも後ろから歩いてきた。






『谷六経由で上本町』



タクシーは…静かに走り出した。


帰りの車内は静かだった。

話すこともなく雨の音だけが…響いてた。








『じゃあここで。聖夜くんお疲れっ、またね』

『あぁ』




マンションの前につき、あたしは先にタクシーをおりた。



ブーン…

聖夜くんを乗せたまま走り去っていくタクシーを見ながらふと思った。






口ではあんなこと言ってたけど、あの人は彼女を好きなんだ。




『はぁーぁっ…』


またため息が出る。

頑張れあたし!
< 116 / 282 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop