my name



家までの道を亮佑が漕ぐ自転車に乗って帰った。

でもあたしはその背中には話し掛けられなかった。


顔が見えない状況でまた何か言われるんじゃないかと思って。


亮佑はどんな顔であたしにアメリカ行きを告げたのかわからない。

だからアメリカ行きが亮佑にとっていいことなのか、嫌なことなのか。

どう思っているのか全然わからない。




「家直行でいい?」

「うん…」



家に着くと亮佑の部屋に入った。


いつもの位置に座ると、亮佑は少しだけ距離をとって隣に座った。


その距離が今のあたし達の距離感なんだと思って哀しくなった。


「あのね、あたしの気持ち…」

「俺、空に内緒にしてることがある」


「え?」

内緒?


「空のトラウマ。原因俺だわ」

「トラウマ…。」

名前を強い口調で呼ばれると泣き崩れてしまう。

原因が亮佑?

確かにあたしはトラウマになった時の記憶がない。

でも…。

亮佑とは高校で初めて会ったはず。

トラウマはもっと前から。


おかしいよ。

そんなはずない。










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