二度目の初恋。
第一章 ―春―

二度目の出会い -kei-

(…桜も散ってきたな。)

足元には桜の花びらが敷き詰められている。


今、俺が向かっているのはB棟w-15教室。
建築棟の三階製図室での名称のほうが通っているらしい。

俺はここの芸術大学の建築学部生で、多田啓介。

この桜並木を横に通うのは二年目になる。



『啓介っ。待てよー。』

建築棟に向かって歩く俺の背中にダイブするかのように走ってきたのは恩田粋。
高校からの腐れ縁で明るい髪を持ち、派手な服装で性格もそれに比例している。動物に例えると気まぐれで猫みたいな奴だ。
見た目と同じで私生活も派手に遊んでいる。女に不自由はしたことがないとよく話していた。
それに引き替えて真っ黒で目にかかるほどの前髪、黒ぶちのメガネをかけて暗い色の服しか着ない俺とはタイプが正反対だ。
だけど粋とは一緒にいても、会話をしていても不思議と違和感なく過ごせる親友だった。



桜並木を二人並んで建築棟に向かって歩いていると粋が、

『課題の締め切り明日じゃん?俺かなりヤバイよ~。』

大きなため息をついて俺の肩に全体重をかけてながら助けを求めてきた。
粋の成績は中の下で建築学部生のくせに絵的センスはかなり低い。
粋にとって製図は苦手な授業の一つだ。
俺たちのクラスは製図の課題提出を明日に控え、建築棟の製図室にみんなが集まり始めていた。
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