roulette・1
降り積もった真っ白な雪は、天から差し込む月明かりでコバルトブルーに輝いていた。

その上に立つ幼い私は、ぼんやりと、ある一点を見つめていた。

白い雪を点々と黒く染めたその先の、大きな黒い“物体”を。

細々と白い息を吐き出し、小刻みに身体を震わす私のようには動かない──“動かなくなった”、それを。

見つめていたところに……ふわりと、雪が舞い降りてきた。

雲も風もないのに、ふわり、ふわりと空からやってくる雪に、思わず顔を上げる。

私は無意識にそれに手を伸ばした。

小さな手いっぱいにこびり付いたどす黒い赤色は、寒さのために凍りついたのか、伸ばした手の皮膚をパリパリと引きつらせた。

しかし、舞い降りてきた白い雪が、掌に触れた途端。

さっと、洗い流されていくような感覚を覚えた。

不思議に思って掌を眺めてみたけれど、私の小さな手はやはりどす黒い血がこびり付いていた。

そのとき、ざく、ざくと雪を踏みしめる足音が聞こえて、肩をビクリと震わせて振り返った。

そこには、にこやかに笑う“人”が立っていて……こう、告げた。

「貴女にはまだ、その資格がないのだね……」



──あれは。どういう意味だったのだろう……。



< 3 / 11 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop