欠陥ドール
その中の、一人の女がワインを持ってリタの元へ近づいていく。
この国では17歳から飲酒が許されている。もう大人の人間として、酒を互いに酌み交わすことのできる特別な境目。できればあたしもカナンみたいにリタの近くでその特別な日を祝いたかった。
なのにあたしは、こんな薄暗い天井裏でひとり監視役をやらされている。これがあたしの役目とはいえ、楽しくない。全然、楽しくない。
なんて、こんなことを考える時点であたしはダメなのかもしれない。感情のないドールになるなんて無理だよ。なれるはずない。
リタと他の人が話しているのを見るだけでこんなにも息が苦しくなる。なりふりなど構わなくていいなら、今すぐあの場へ飛び込んで、引き離してやりたいくらい。
カナン、あの時あたしは頷いてしまったけど、カナンのいう完璧なドールにはなれない。だってあたしはリタに出会って、知りすぎてしまった。きっとあたしは欠陥品のまま。直らないよ。