欠陥ドール
ちゅ、と頬にリタの唇が押し付けられて、あたしは目を見開いた。
リタは悪戯をした子供みたいに、ニッと歯見せて「プレゼント、貰ってなかったから」と笑う。
「じゃーな」
小さく手を振って走り出すリタの背中を呆然と見つめた。
思考が、停止していた。
まるで映像を巻き戻して再生するかのように、さっきの出来事を思いだす。
リタの唇が…。
まだ頬に残る感触がやけにリアルで、一気にあたしの熱が上昇する。そこだけが、熱い。熱すぎて、火傷してしまいそうだ。
熱を持ったそこを押さえて、あたしは無心に走り出す。そうでもしないとおかしくなってしまいそう。
部屋までの距離なんかあっという間だった。
バタン!
自分の部屋に勢いよく飛び込んで、床に倒れ込むように手をつく。
息がうまくできなくて、何度もむせ返りそうになる。
「…おいおい、そんな息乱してどうしたんだよ」
部屋の中から聞こえる有り得ない声に、あたしは息をするのも忘れた。
「っ、カナン…?なんで、いるの?」
「言い付けを守らないドールを教育しようと思ってな」