欠陥ドール


カナンのあまりにも冷たい笑顔に、本能的に危険を感じて身の毛がよだつ。



「なんで、怒ってるの?」


この笑顔は知ってる。この静かに殺気を放つカナンは、きっと。



キレている。



「……怒ってなんかないけど?」



まただ。冷たくて、氷のよう。まるで本物の人形みたいな、綺麗すぎる作られた笑顔。



嘘つき。カナンがあたしの事何でも分かるみたいに、あたしだってカナンの事、分かるよ。



ずっと、一緒にいたんだもん。



「俺は何て言った?言い付けは守れと言ったよな」



空気がピリピリして、痛い程に伝わってくる。カナンの怒りが。



…あたしが内緒でリタと会ってるの、バレてる。だからって、部屋で待ち伏せなんて。



「今までうまく隠してるつもりだったか?」



ハッと馬鹿したように笑った。



「今まで目をつむってやってきたが、もう終わりだ。甘い顔はしない」



甘い顔、ってなによ。



「もう二度と、リタ様に会えない体にしてやろうか?」



なんで、そんな事言うの?あたし達、ずっと一緒に育ったのに。


リタと同じくらい、カナンも大切なのに。
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