欠陥ドール
こわい。
いつものカナンは、怒っていても文句を言っていてもどこかに必ず優しさがあった。
なのに今はそれが全然感じられなくて。いつも透き通るように綺麗なカナンの翡翠色の瞳も、今は真っ暗だ。
「……言ったよな?俺はお前しか信用できないって。………裏切るのか?」
「う、裏切るって……」
ああ。感情のないドールって、こういう事をいうのかな。カナンの顔、さっきから一切変わらない。
「人間なんて、強欲で汚いものだ。リタ様だってお前の価値を知れば、いずれ利用するに決まっている」
一定の足音を刻んで、カナンがあたしに近付いてくる。それだけで、見えない何か押されているような圧迫感を感じる。
「いや、もう利用しているか。自分は汚い仕事は一切せずに、お前を使って全て片付けているんだから」
「や、やめてよっ!リタはそんな人じゃないよ!」
そんな風に言わないで。リタは何も知らないんだから。
「カナンも言ってたじゃない!これが、ドールの役目だって!リタを守る為にあたし達がいるって」