欠陥ドール
ついにカナンがあたしの前に来て、隙間がないくらいぴったりと体をくっつけた。
「そうだ。それが役目。お前はただ言われた事だけをやっていればいい」
至近距離で真上から見下ろされることで、威圧感がいつもより増してる。
それでも、あたしは反抗をやめない。
「ちゃんとやってるよ…!なのになんで裏切ったとかいうの…?」
あたしがカナンを裏切るなんて事ないのに。リタとはまた違う、特別な存在。多分、カナンがいなくなってもあたしはあたしでいられない。
「………十分、裏切ってるよ」
「…え?」
一瞬、カナンの顔が歪んだ気がした。それが泣いてるみたいに見えて……。涙なんか出ていないのに。
気が抜けた瞬間、見計らったようにトン、と肩を押され、あたしはベッドへと仰向けに倒れ込んだ。
「本当の事を知ったら、お前はきっとリタ様の事を殺したくなるよ」
耳を疑うような言葉に、息を呑む。声が出ない。なにも、紡げない。
なんで、あたしがリタを殺すなんて。そんなの絶対ありえない。
開きかけた口は、覆いかぶさるカナンの唇に塞がれた。