欠陥ドール
それはあまりにも突然で。突然過ぎて。あたしの腕を掴むカナンの手の力がこんなにも強いこと、初めて知った。
唇を割って口内に侵入する熱い異物感も、初めて知った。
「………っ、っ!」
息する暇なんてないくらいに、口内を掻き回されて熱いものが絡み合う。何度押したってカナンはビクともしなくて。全てを奪われしまいそうなくらい乱暴で、強引。
締め付けられる手首も、あたしが圧迫感を感じるくらいに力を込められて。
なによりも、あたしにとって兄のような存在だったカナンが、こんなことをする事実があたしの体を硬直させた。
だけどカナンに止める気配なんかなくて、さらに熱が増す。
さらに激しく、深く。加速する。もうすでに酸欠状態だったあたしの意識が、遠く離れて飛びそうになる。
それを知ってか、ゆっくりと優しくカナンが唇を離した。
「……ふ、は」
さっきまでの強引さが嘘みたいに。
今すぐカナンをひっぱたいてやりたいのに、焦点が合わない。吐き出す息が白くなってしまいそうなくらい、熱い。