欠陥ドール


「……っ、なんで、こんなことするの?」


両手を拘束されたままなのに、抵抗することさえ忘れてしまうほどだった。


虚ろな目を細めて、まるであたしなんか映してないように見下ろすカナンに、胸が針で刺されたみたいにチクリとした。


「ただの、忠告」


形のいい唇から零れた言葉は、信じられないくらい抑揚のない声で。


カナンは顔色ひとつ変えない。


心臓が止まってしまいそうだった。いつものカナンじゃない。


「マリー…」


やっと拘束を解かれた両手に、冷たい空気が触れてピリピリした。


カナンはあたしをそっと抱き起こして、首の裏を指でなぞる。


触れた指先から伝わる温もりはなにもなくて。


「次は、こんなんじゃ済まさないから」


耳元で囁かれた言葉に目の奥から熱いものが込み上げてきそうで。


でもそれが何か分からなくて、あたしはそっと目を閉じた。
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