欠陥ドール
カナンがカナンじゃないみたいで、怖くて。見たくなくて。
目を閉じたあたしの首筋にピリッと吸い上げられるような刺激。
「……っ」
うっすらと目を開ければ、カナンの柔らかい髪がすぐ近くにあって、肌を撫でていた。
「な、なにしたの…?」
「おしおき」
あたしから離れたカナンが薄い笑いを浮かべた。
「これ、リタ様には見せない方がいいかもね」
スルリと首筋をなぞるカナンの指から体温が伝わってくる。なんで、なんか嫌な言い方。
「俺のこと軽蔑する?」
カナンの指が首筋から髪に移動して、くるくると巻き付けていく感覚が、妙にくすぐったかった。
あたしはカナンに何も言い返せなかった。正直、カナンが無理矢理こんなことするなんて思わなかった。
だけど、これくらいでカナンのこと、突き放せない。それくらい、カナンだって分かってるくせに。
「……そんな顔すんなよ」
そんな顔って、今あたしがどんな顔してるのかなんて分かんないよ。
「俺は、お前のことを守らなきゃならないから」
また、カナンの顔が冷たくなっていく。
「俺はお前の為にお前を傷付けるから」