欠陥ドール
―――昨日の夜はよく眠れなかった。カナンが、あんな事するなんて。
そしてカナンの言った言葉が離れない。考えれば考えるほど、抜け出せない迷路に陥りそう。
頭がガンガンする。
正直、一日布団に丸まっていたかった。一歩も外に出たくなかった。これが、現実逃避ってやつかな。
首筋に小さく残る赤い痕。これは、あれだ。
無知なあたしにだってこれくらい分かる。だけど、それをカナンがする理由が分からない。
あたしを守る為にあたしを傷付けるって?何それ。
カナンの言葉はいつも曖昧で、矛盾だらけでよく分からない。でも、その裏にはいつも深い意味が隠されてる。
それに守らなきゃいけないのはリタの方でしょ?
『お前を守るのはお父さんとの、約束…』
口を尖らせて聞いたら、カナンはそう言ったんだ。
分かんない。馬鹿カナン。なんでいっつもあたしには全部教えてくれないの。
……ふて腐れたってしょうがない。行こう。庭の手入れはあたしの仕事だ。