欠陥ドール
新しい苗を植えて、肥料をやる。あたしはずいぶんと没頭していたみたい。
頭をじりじりと照らす光に、太陽が真上にきていたことをようやく知る。
一段落したし、休憩しようかな。多分、もうお昼どきだよね。道具を片付けようとして、はっと手が止まる。
そういえば、リタが今日来てない。
どんなに忙しくても、合間をぬってお昼までに一度は会いにきてくれるのに。
没頭しすぎて気付かなかった?まさか。あたしがリタに気付かないなんて。
頭の中がぐるぐるして立ち止まっていると、遠くで甲高い笑い声が聞こえる。若い、女の人の声だ。
「待ってください、リタ様ぁ!」
甘い、擦り寄るような猫撫で声。それよりも、その声がリタの名前を呼んだ事に体が硬直する。
「………っ、だから、ただの散歩ですからすぐ戻ります」
「でしたら私もご一緒させて下さいな」
遠くから見えた。だんだん近づいてくる。リタと知らない女の人が歩いてくるのが。
…違う。知ってる。昨日のパーティーでリタにベタベタ触ってた人だ。