欠陥ドール
心臓が嫌な音で高鳴っていく。なんで。どうして。
「マリー…!」
あたしを見つけたリタが、小走りでこっちへ走ってくる。もちろん、あの人も一緒に。
「マリー、おはよう。……ってもう昼か」
はにかんだように笑うリタの顔。いつもなら、胸がぎゅってなるくらい嬉しいのに。
「誰ですの?」
リタの後ろからひょこっと顔を出すこの人のせいで、あたしはリタに挨拶すら返せない。
白い肌に薔薇色の頬。薄いピンクのドレスがよく似合う。
昨日はあまり気付かなかったけど、綺麗な顔立ちをしてる。
リタの横に並んでも、違和感がないくらいに。
「……うちの庭師」
そう紹介するリタの言葉が放り投げたようにそっけなくて、胃のあたりがチクチクした。
「まあっ。こんな可愛い庭師さんがいるなんて素敵ですわ!まるでお人形さんみたい」
その人はあたしを観察するように見る。まるで品定めでもされてるようで、すごく居心地が悪い。
「私、ユラハと申します」
「……マリーです」
にっこり笑って、お辞儀をする彼女に失礼だとは思いながらも自分の名前を返すのが精一杯だった。