欠陥ドール


水遣りを終えたあたしは、中庭にある薔薇園の手入れをする事にした。



花の世話をするのは好き。今では敷地内の花全部をあたしが世話してる。



綺麗な花でいっぱいになったらリタが喜ぶから。


すごいな、ってあたしのこと褒めてくれる。



だからあたしは一生懸命に花の世話をする。こんなあたしでも、綺麗な花を咲かせられる。


だから、今ではそれがあたしの表向きの仕事。



屋敷の方がさっきから騒がしい。きっとみんなリタの誕生日のパーティーの準備で忙しいんだ。



きっと色んな人が来て、リタの誕生日を祝うんだろうな。



でもあたしはその場では祝えない。



あ、リタに『おめでとう』と言うのを忘れた。



…どうしよう。



作業の途中で立ち上がって、ぼんやりとリタの事を考える。



言いたい、今すぐに。



「どこ行くんだよ、マリー」



「……カナン」



道具を放り出して、屋敷へ向かおうとするあたしの前に立ちはだかる細身の少年、カナン。
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