スキ、だけどキライ



気がつくと、後ろから颯太を抱きしめていた。

いつもの自分じゃないのはわかってる。でも‥颯太を行かしたくない。


『苓那?』

「もういいじゃん‥もうやめてよ」


『お前も野球やってんだからわかるだろ?勝負は途中で逃げ出すことはできない』


怪我をしても尚、颯太の意志は堅かった。


「もう‥誰も失いたくないんだ‥っ」


『バーカ俺は死なねえよ』

肩で息をしてるくせに、楽しそうに笑っている。




バカはどっちだよ。バーカ、颯太。


「頑張れっ‥」



『苓那を連れて行くからな、甲子園』


そう言うと、お互いの唇が重なった。

あのときとは違い‥優しいキス。



あ‥そっか。




あたし、颯太がスキなんだな。


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