雪に埋もれた境界線
「ねぇねぇ、面接ってどんな感じ? 黒岩玄蔵って人どうだった?」


「ん〜、ただ質問されたことに答えただけだし、室内が暗くて薄い布みたいなのがかかってたから、黒岩玄蔵氏の顔は見えなかったよ」


「ふ〜ん。質問されるだけか。でも顔隠すなんて余程不細工なんじゃない」


 久代は髪の毛をいじりながら面白そうに答えた。


「いや、もしかしたら、顔にひどい火傷を負っているとか、整形に失敗したとかかもしれないよ。でなければ顔を隠すことはないだろうからね」


 座間が真剣な顔でそう云うので、陸と久代はソファに腰掛け、座間を見て答えた。


「そうかもしれませんね。自分の顔を見られたくなくて、屋敷自体を薄暗くしてあるのかもしれませんし」


「だとしたら何か不気味〜。メイドも料理人も皆ロボットみたいに無表情じゃん。執事の磯崎さんからしてそうだし」


 陸に続いて久代が顔をしかめると、座間は久代を怖がらすような口調で云った。


「久代ちゃん。本当は黒岩玄蔵っていう名のドラキュラ伯爵で、屋敷の使用人は蝙蝠が人間に姿を変えているだけかもよぉ」


「やめてよ座間さん! マジ怖いんだけど」


 久代は顔をひきつらせ、陸に腕を絡めた。

 怖い話しが苦手なのだろう。意外な久代を見て陸は笑いを堪えた。


「冗談だよ。現実にそんなことはないよ」


 座間は笑いながらそう云うと、突然、磯崎のアナウンスが部屋に流れた。

 どうやら久代が次の番である。
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