雪に埋もれた境界線
「嫌だぁ、次私じゃん。座間さんが変なこと云うから怖いよぉ」


 久代は口を尖らせ座間を睨んだ。


「大丈夫だって。陸君だってこうして戻ってきたんだし、行っておいで」


 座間は半分笑いながら久代に云うと、「もうっ」と一言座間に云い残し、立ち上がるとサロンの扉を開け出て行った。

 すると一分もしないうちに木梨が扉を開け、サロンに入ってきたのである。


「今、廊下で久代ちゃんに会ったけど、何だか怖い顔していたよ。彼女どうしたんだろう」


「座間さんが久代ちゃんを怖がらすことを云ったばかりだったんですよ。黒岩玄蔵はドラキュラ伯爵だとか、使用人は蝙蝠だとか」


「ハハハ。それで久代ちゃん、あんなに怖い顔していたのか。彼女があんな怖い顔するなんて始めて見たから」


 陸の解説に木梨は声を出して笑った。

 久代を怖がらせた当人の座間は、頭を掻いて苦笑している。

 木梨もソファに腰掛けると面接の話しをした。どうやら陸と同じような質問をされたらしい。

 しばらくすると磯崎のアナウンスが流れ、相馬を呼び出していた。
 


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