姫と竜 *王子が誘拐*

幸い季節は春先


これから行く地が人々が踏み入った事のない未開の地ならば、土や水 野山の恵みもあり 死の恐怖に脅える事もないはず。
土地を慣らし耕す事が出来れば、冬を越える事も可能なはずだ。


竜にさえ出会わなければ…、


最初は言い伝えが頭をよぎり、ロック山脈に入る事をためらったバルクト王だったが、後ろに家族の気配を感じ 前へと突き進んだ。


…引き返す事など出来ようはずもない。
だが、このまま進む事で伝説の竜に出会ってしまったら…?


そんなバカな…

そんなはずはない。

愚かな考えだ…竜を見たなどと聞いた事もない ただのおとぎ話だ。


そう 自分の耳まで波打つ心音と 震える体と足に言い聞かせ 拳を握りしめ、家族を背にして
また突き進む。



だが 次の瞬間!!



その気高く 強い王の心も目の前の恐怖と

妻と子供達の悲鳴で バラバラに打ち砕かれる!!



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