姫と竜 *王子が誘拐*

3話 遭遇

 
漆黒の…

夜の様な闇が突然目の前に現れ 視界を塞ぐ。襲いかかる風が轟音を撒き散らし 風圧で体が押し潰そうと向かってくる。

目を見開く事など到底叶わず、その場に留まる事が精一杯だった。

そして風が少し止み、バルクト王がなんとか目を見開いた頃には身の毛もよだつような光景と、家族の聞いたこともないような金切り声に体はガチガチに固まり、目は涙で霞み 見えなくなっていた。

立っているのが奇跡だと言わんばかりに 足は恐怖におののき肌に触る風はどんどん冷たくなってゆく。底知れぬ恐怖が体を一段と震わせた。歯はガチガチと音をたて いわれのない恐怖が身体中をむさぼり喰う。


…これは悪い夢だ。


そう願う心が、この世界をより支配し黒く世界を覆い隠す影が、より一層強くなる。

心は現実を受け止めよ。と必死にもがくが、夢の様な目の前の現実に吐き気がして動く事が出来ない。


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