姫と竜 *王子が誘拐*


今度こそ バルクト王の肩は力なく落ち
声は悲しみに震えていた…

「ならば…ならば貴公は我が家族に…殺されに戻れと、…そう言うのか?二日三晩かけて来たこの地から戻り殺されに戻れと
そうおっしゃるか…?」


後ろの家族達から嗚咽(おえつ)と鼻をすする音が聞こえる…

だが竜はそれでも構わず続けた。


『我には関係のなき事だ。殺されるのであればそれだけの事をして来たのであろう』


「違う!何もしてなどいない!」

王は即座に答えたが…もうそれ以上の言葉が出ては来なかった。


何故わからない!


バルクト王は大人げもなくじたんだを踏み、拳を握り締め 目には涙を浮かべていた。

「お願いだ…頼む。」

──どんなに言葉を発っしてもまるで空気を食べているような気分だった…



だが竜からすれば当然の事かもしれない。犯罪者でもなければこのような地には逃げてなど来ないだろう。そのリスクを背負う事など竜にすれば毒を飲むような物だ

受け入れないのは当然の事。


バルクト王は力なくその場に座り込む。竜が怖くなかった訳でない。
必死に心を律し平常を装っていたのだ。もう 指の一本も動かす気にはなれなかった。

数ヶ月ものあいだ監禁 幽閉され休む間もなく3日3晩歩き続けた。その結果がこれだ。見たこともない化け物と通じない会話…


あとは 死んでゆくだけ──


遠くの方で家族の叫び声が聞こえた様な気がした…


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