だから、笑え
* * *

「秋人、この漬け物すごい美味しいよ」


小皿を差し出してくれたのは赤塚小春。高校からの友人。大学も一緒。こいつの緩い空気が絶妙。

「天咲君♪今日は和食にしてみたんだけどどうかしらっ」


テンション高い声でウキウキと俺に笑顔を向けるのは母親の牧子さん。


「牧子さんの料理はなんでも美味しいですよ」


小春とよく似た艶やかな瞳が嬉しそうに婉曲に曲がる。牧子さんは美人だ。



そして、


「聞いてるんですか」


膨れっつらで鋭い声を出すこの敬語系萌女子、は赤塚日和。


「なにが?」


「なにがって、あたしが聞いたんです。今日空けとけって何ですか」


寝癖がやっぱりフワフワ揺れている。日和は、不機嫌に俺を睨んだ。


「今日しかないから」


そう、今日しかない。


「そんなのあたしの都合じゃないです」


「ああ、俺の都合だ。」

「勝手過ぎます」


「悪いな」



俺は、よくダシの出た味噌汁を飲み干すと、日和に早く準備しろよ、とサラリと言ってやった。


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