ストーカークラブ
「別れるなんて許さない! 別れるなら私生きていけないって言ったでしょ! 別れるなら一緒に死んで!」


 その時、近くで様子を見ていた陽一が地元の仲間を集めてくれていたので、四、五人の男達が明るく偶然を装って信太に声をかけた。


「信太〜! こんな所で何してんだよ。皆でお前の家に行く所でさ、バッタリ会えて良かったよ〜」


 美奈子が俺からすっと手を放し、踵を返し無言で帰って行った。

 作戦成功に安堵した。


 その夜は地元の仲間とワイワイ飲み明かした。

 作戦とは、信太と美奈子の様子を見て、ヤバそうだと思ったら、陽一があらかじめ知らせておいた仲間に連絡をして、皆が揃ったら信太に声をかける事だった。それは美奈子の性格を逆手にとったもので、外面がいい美奈子ならば、大勢の前で醜態を曝け出す事はないと踏んだのだ。

 見事その作戦は成功し、その時の信太は、もう全てが大丈夫じゃないかという気がしていた。

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