ストーカークラブ
 避けなきゃと思った瞬間、信太の目の前で白石さんは倒れた。
 そして白石さんの後ろには、下を向いて息を切らしている茶髪の女性がいる。

 あまりに一瞬で分からなかったが、信太にナイフが刺さる寸前、この女性が白石さんに飛び蹴りをしてくれたのだった。

 下を向いて息切れをしてる女性に、


「助けてくれてありがとう」


 そう告げると、茶髪の女性は呼吸を整えながら、ゆっくり顔を上げた。


「えっ? 優子?」


 優子は俺の地元の後輩であり、昔はバリバリの元ヤンだった子だ。優子ならばさっきの飛び蹴りも納得いく。

 たまたま通りかかったのだろうか?

 優子とは二、三年前、地元の飲み会で会ったきりだった。


「お久しぶりです。信太さんが刺されなくて良かった。警察呼びますね」


 その時、白石さんが倒れたまま顔を上げた。


「優子〜どうして、そんな奴庇うんだよぉ。こいつさえ居なければ俺達幸せになれるじゃないか〜。うっ、うっ」


 白石さんは涙でぐちゃぐちゃの顔を優子に向けてそう言った。
 優子は白石さんを無言で睨みつけている。

 どういう事なんだ? 優子は白石さんの彼女なのか? それでどうして白石さんが幸せになる為に俺が邪魔なんだ?

 新たな疑問が生まれたその時、けたたましいサイレンが鳴り響きパトカーが現れた。

 信太と優子も警察署に行き、被害者の信太は長い時間、色々と質問された。

 こうして白石さんは殺人未遂で捕まった。

 警察署から出ると、優子が待っててくれていたので、信太は改めてお礼を言った。
 すると何故か優子は、


「信太さん、すみません。危険な目に合わせたのは私のせいです」


 優子は申し訳なさそうな顔をして深々と頭を下げた。


「何で優子が謝るんだよ。助けて貰ったのは俺なのにさ」


「全てお話しします。聞いて下さい」


 そして信太は優子と、警察署の近くにあるコーヒーショップに入った。


< 37 / 43 >

この作品をシェア

pagetop