六人に届いた手紙
 キャーーーーーーーーーっ!!

 朋子の悲鳴で一斉に視線が一点に集中すると、床に金髪の短いカツラが落ちていた。裸のまましゃがみ、蹲った朋子に優子はタオルをかけた。

「あっ、あれっ、私の着替えの上にあったの」

 朋子は、床に落ちた金髪のカツラを指さして言った。
 そして、恵子がカツラを拾いあげると朋子は目をそらした。
 どうしてこんな物が、朋子の脱衣カゴの上に置いてあったんだろう? しかもこれって……。
 優子が考えていると、

「これってさ、加奈の髪型そっくりなカツラだよね?」

 亜紀の一言に全員固まってしまった。
 確かにこのカツラ、加奈の髪型にそっくりだった。でもイタズラにしては悪趣味だし、大浴場には私達六人しかいない。まして貸切りである。旅館の従業員がイタズラでこんな事するとは思えない。だからと言って私達六人の中にこんな事をする人間がいるとは考えたくない。

「一体誰? 誰がこんなイタズラしたの? 言いなさいよ!」

 朋子は半狂乱になって全員に対して怒鳴った。

「朋子落ち着いて、この中にそんな悪趣味なイタズラする子なんていないよ! ねっ?」

「優子はそうやって、優しすぎるからストーカーにだって狙われたんじゃない! イタズラも幽霊がしたとでも言うの? 私、先に部屋に戻る」

 朋子に痛い所を突かれた優子は黙ってしまった。
 朋子は服を着て、スタスタと脱衣所を出て行ったが、心配した沙也加が「私にまかせて」と言い、追いかけて行ったので大丈夫だろう。

「優子、朋子が言った事気にする事ないからね。何だか、朋子宴会場でも精神的に不安定だったみたいだし」

 幸子の思いやりが嬉しかった。確かに朋子は、宴会場でも精神的に不安定だったし、何より朋子を更に怖がらせる様なイタズラをするなんて……。


「でもさ、これ何で朋子の脱衣カゴに入ってたんだろうね?」

 恵子がカツラをつまみながら言った。


「加奈の幽霊がやったのかなぁ」

 亜紀もカツラを見ながらつぶやいた。


「とにかく服着ようよ! 裸のままじゃみんな風邪ひいちゃう」

 優子がそう言うとみんな服を着出した。
 それにしても一体誰がこんなイタズラするんだろう。

 私達は闇に飲み込まれていった。


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