六人に届いた手紙
「それって、加奈を知る外部の人が、フロントに置いて去って行ったのかな? だって、ここに居る六人は加奈が自殺だって事知ってるし、それを知らない人が犯人じゃないかなぁ」

 恵子がそう言うと、幸子が優子に訊いた。

「ねぇ優子、ここって近くに泊まれる場所とか、交通手段ってある?」

「ううん。市内まで出ないと泊まれる場所はないし、ほら、来る時分かったと思うけど、この旅館は、ここまで車が入れない山の上だから、バス停から少し山を登ったでしょ? 周りに民家もないし、寂しい場所だよねぇ」

「じゃあ、やっぱり加奈の幽霊が犯人て事にならない?」

 優子の説明を聞いた亜紀が、加奈の幽霊説を言い出した。

「百歩譲って、加奈の幽霊が犯人だとして、何で朋子に殺されたなんて言うの? 加奈は自殺したんだよ?」

 そうだ、幸子の言う通り、加奈の幽霊が犯人なら、殺されたなんて言うはずはない。

「加奈の自殺の原因って、結局何だったんだろう?」

 つぶやく様に沙也加が言う。

 確かに今になっても加奈の自殺の原因を誰も知らない。
 加奈の二十歳の誕生日の前日、優子は加奈からメールを貰っていた。彼氏とお祝いするんだと嬉しそうな内容だったが、次の日加奈は自殺した。葬儀に彼氏は居なかった。正確には来ていたかもしれないが、今度紹介するねと言ったきりそれは実現しなかった為、彼氏の顔は未だに誰も知らない。加奈の自殺した場所は、地元にある高層マンションの屋上だった。見晴らしが良い事が有名で、中学生の頃はしょっちゅうみんなで景色を見に行っていた場所だった。葬儀の時、加奈の唯一の肉親である弟さんは、まだ高校一年生だったが、立派に喪主を務めていた。しかしその弟さんも、何年か前に交通事故で亡くなったと噂で聞いた。

 仮に弟さんが生きていて、加奈は自殺ではなく殺されたんだと思い込んでいたとしたら、加奈と仲が良かった私達六人を疑うのだろうか? 加奈の彼氏はどうなんだろう? かなり年上だと言う事しか聞いていない為、人物像も何も分からない。

 そして闇は私達の友情をも蝕んでいった。

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